お客様の話を聞きながら病気の原因を探り、一緒に解決策を見つけていく。
まずはお客様の話にじっくりと耳を傾けることから。
JR石巻駅から車で3分ほどの場所にある「ヤマト漢方薬局」。ご主人の福谷信治さんと、一緒に働く奥さんが穏やかな笑顔で迎えてくれます。漢方薬局と聞くと古めかしいイメージを抱く人もいますが、店内は明るくて入りやすく、スタッフの方が「体が温まりますよ」と、気さくに漢方のお茶を出してくれます。そんなアットホームな雰囲気の中、じっくりと時間をかけて相談に乗っていただけるので、ついつい長居してしまう人が多いそうです。
福谷さんは薬剤師であるとともに、宮城県で初めて「国際中医師」の資格を取得した人です。「国際中医師」とは、中国政府が中医学を国際的に正しく普及することを目的に、外国籍の人を対象に中国の漢方医師(中医師)と同じレベルであることを認定する制度のこと。中国でも難関とされるこの資格試験に福谷さんは2004年、1000満点中991点という優秀な成績で合格し、地元の新聞でも取り上げられ、紹介されました。
「中医学」とは中国の伝統医学のことで、西洋医学と並ぶ世界2大医学のひとつです。「病気を診るのが西洋医学だとすると、中医学はその人を全体的に診て、病気の原因を治していく医学なのです」。
そう話す福谷さんは、まず、お客様の悩みをじっくりと聞くことから始めます。そして、その人の顔色や肌のツヤ、声の大きさ、眼光などを鋭く観察して、どこに異常があるのかを探ります。このことを中医学では「望診(ぼうしん)」といいます。
「話すだけで元気になって帰っていく人もいますよ」。やさしい声で、どんな話もひとつひとつ丁寧に受け止めてくれる姿勢には、信頼できる安心感があります。
自然界の秘められた力で体を癒す“漢方”に魅せられた。
福谷さんは家業が薬局だったこともあり、薬剤師をめざしたのは自然の流れだったと言います。その頃から漢方に興味を持つようになり、大学卒業後は東京の漢方専門薬局で修業を積みました。そして、1990年4月1日、石巻に中国漢方専門の「ヤマト漢方薬局」を開業。「石巻の人たちの健康は自分が守る!と思って始めました」。若き日を思い出しながら、福谷さんの表情が緩みます。その後、日本中医薬研究会に入り、本場・中国の漢方を学び、その秘められた力の中に奥深さを知りました。
毎日、様々な病気の相談を受けていますが、現在、特に力を入れているのは「皮膚病」と「子宝相談」です。アトピーや不妊などに悩む人が人づてに実績と評判を聞き、多くの方々が来店されています。
また、中医学は「未病(みびょう)」を得意とする医学でもあります。「未病」とは病気になる手前の状態のこと。「肩こりやめまいなど体に不調を感じても、病院の検査では数値として現れないこともあります。そんな時、体調が回復しなければ不安だけが募っていきますよね。原因を見つける中医学では、なぜそうなったのか、どうすれば改善できるのかを説明することができるのです。処方した漢方薬も、お客様に納得してから飲んでいただくと効果は変わってきます」。
自らが「健康」の先頭に立つ!毎朝のウオーキングを日課に。
2009年に50歳を迎え、地域の方々の健康を支えるだけでなく、「自分が健康の先頭に立たなければならない」と思うようになったそうです。一年の計は元旦にあり。それまでほとんど運動していなかった福谷さんは、1月からウオーキングを始めることを決意。毎朝40分、5000歩のウオーキングを1年間やり通しました。
「毎朝歩きながら、季節の変化を目や耳で楽しむことができる。歩くことはなんと気持ちいいんだろう!と実感しました。まるで子どもが歩き始めたときのような、そんな感動がありました」と、うれしそうに話します。「お客様に生活改善のアドバイスをするとき、運動・睡眠・食事は健康の重要な要因になります。その時、『私も毎朝歩いているんです。お薦めしますよ』と言えるようになったのがいいですね」。
「中国には『上工(じょうこう)は未病を治し、中工(ちゅうこう)は己病を治す』ということわざがあります。『腕の良い医者は病気になる前に治してしまい、普通の医者は病気になってから治す』という意味です」と話す福谷さん。
平日は薬局でお客様の相談に乗り、休日は日本中医薬研究会で勉強。そして、2010年で「ヤマト漢方薬局」は開業20周年。
「地域の人たちの健康を守る!」という高い志は、これからも福谷さんの胸の中で静かに、そして熱く燃え続けます。
最後に福谷さんからひと言。「悩みを抱え込まないで、ぜひ一度ご相談ください。一緒に解決策を見つけましょう」。
(取材年月:2009年12月)